タスマニア再発見

豪州国内で毎月発行されている日豪プレス紙と同時掲載でお送りする新特集
当社代表の千々岩 健一郎が同紙に連載する新しいコラムです。
タスマニアの魅力を新しい切り口で紹介するこのコーナーをどうぞお楽しみください。

第56回日豪プレス 2013年4月号掲載 盆栽的「南極ブナ」 フェントン湖

 タスマニアにも秋の季節がやってきた。ダーウエントバレーのポプラの木々もすっかり色づいているが、今回はこのダーウエントの更に上流部にある、マウントフィールド国立公園のフェントン湖とその周辺の南極ブナについて紹介しよう。「南極ブナ」とは正式にはNothofagus gunii(俗称Fagus)のことで、豪州では唯一生き残っている固有の落葉樹である。豪州で生き残っているといっても、もちろんタスマニアにしか存在していない。ラッセル滝で名高いマウントフィールド国立公園の入り口から曲がりくねった未舗装の登山道路を上り詰めていくと標高が1000mぐらいの地点に突如このファガスが登場してくる。周辺はすべて、ユーカリやその他の常緑の植物で囲まれているためにこの唯一の落葉樹のオレンジ色は、ひときわかがやいて見える。

南極ブナの名前の所以は、この葉っぱの化石が南極大陸で発見されていることによる。そうこの植物は一億数千万年前のゴンドワナ大陸時代から生き残っている太古の植物群のひとつ。数万年前の氷河期の終焉の後地球が温暖になると共に標高の高いところに追いやられて生き残っている貴重な存在だ。

マウントフィールド国立公園の上部、氷河湖フェントンの付近には風化して表面が白色や黒色の地衣類で覆われた火成岩の岩塊がころがり、その間に曲がりくねった枝振りのファガスがまるで盆栽のような感じで存在している。湖水で洗われ白く枯れたユーカリの流木が共に存在して天然のロックガーデンの風情だ。背景にはスノーガムの林が広がる。この付近のスノーガムの樹皮には、赤と黄色の縞模様が現れて、雨にぬれるとその鮮やかな色合いが特に印象的になる。

実は、この場所で昨年のちょうど4月の中旬に、日本の航空会社のカレンダーの撮影を行ったことがある。テーマは「World of Beauty」で毎月の写真に各季節の世界各地の有名どころでその土地の女性がモデルになって登場するというものだ。このフェントン湖の南極ブナをバックに、ブッシュウオーキングのスタイルの美女が写ったこの写真は、このカレンダーの11月に採用されることになった。

この落葉の南極ブナはいったん山火事にあうと復原が非常に難しいとされている。タスマニアでも生き残っている場所は限られた所になっていて、西部の標高の高い国立公園内、すべてを併せても延べ100平方Km程度とのこと。
この場所は、ホバート中心部から車で約
1時間半の行程です。この黄葉の時期に是非一度お出かけください。ベストシーズンは4月中旬から5月の初めごろまで。

上の写真:フェントン湖 周辺のファガス三態。
下の写真:左から、フェントン湖畔、ファガスの黄葉、スノーガムの林


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