タスマニア再発見

豪州国内で毎月発行されている日豪プレス紙と同時掲載でお送りする新特集
当社元代表の千々岩 健一郎が同紙に連載するコラムです。
タスマニアの魅力を新しい切り口で紹介するこのコーナーをどうぞお楽しみください。

第79回日豪プレス 2015年3月号掲載 「眠れる水」の 湖上リゾート

世界遺産のクレイドルマウンテン国立公園の南に位置するセントクレア湖は、古来、「眠れる水」と呼ばれる豪州で最も深い水深をもつ氷河湖である。

この湖の豊かな水源を発電事業に活用するべく計画がスタートしたのは1930年ごろ。南側の岸から湖に向かって伸びる250mの橋脚の先にポンプ小屋が造られた。建物はアールデコ調の5階建てのシンプルな建物で、1940年の正式開業以来50年以上にわたってタスマニアの発電事業に寄与してきた。今回は、このポンプ小屋が今年の1月にリゾート宿泊施設として生まれ変わり、正式に開業を開始したという話題である。

この世界遺産の湖上に立つ建物と周辺の施設をツーリズムの資源として活用できないかとのアイデアは、1995年の閉鎖直後からあった。めざとくシドニーの会社が敷地の50年のリースを取得したものの事業化には結びつかず、1999年にタスマニア政府が買戻しを行った。その後、いくつかの大きなホテル運営会社が、巨大な投資の下でリゾートホテルの計画を立ち上げたが、環境保全の観点からなかなか承認を得るところまで至らなかった。2005年に、タスマニアのツーリズム事業の開発者として名高いサイモンカラント氏が、「小規模だが価値の高い」というコンセプトのエコ宿泊施設の計画を立ち上げ、数年後にやっと建設の認可を得るに至ったのである。新たな建物を建築することなく、既存の建物のみを活用した環境保全型の考え方がまさにこの場所にふさわしいものとして承認されたのではないだろうか。

湖上に立つポンプ小屋は、大幅に内部が改装されて、特異なエコリゾートとなった。施設の名称は、Pumphouse Point ポンプハウスポイント: 12の部屋とラウンジのある「The Pumphouse」に加え、6つの部屋とレストランの設備のみを持つ湖畔の水力発電公社の建物を改装した「The Shorehouse」、全体で合計18部屋しかないコンパクトな施設である。

世界遺産の国立公園から流れ出る清涼な水を満々とたたえるセントクレア湖は、周りを深い森林と山岳に囲まれた特異な雰囲気を持つ場所である。特に夜明けや日の入り前の湖水に映る光線の移り変わり、朝霧に包まれた山々の幻想的な風景など、湖と一体化した宿泊施設での滞在は、タスマニアでもきわめてユニークな体験となることだろう。もちろん、周辺でハイキングを行うもよし、フライフィッシングの釣り糸をたれるのもよし、またハリモグラやカモノハシなどの動物たちとの出会いも大いに期待できる。

上の写真:湖上リゾートの風景 (ポンプハウスポイント提供) 
下の写真:左から ナルシサスベイ、ハリモグラ、セントクレア湖の夕景


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