1803年のタスマニア入植時には島内に推定3千～1万人程度が暮らしていたPalawaですが、現在では純血の方は残っていないと言われています。入植者たちとの抗争、略奪、隔離政策や疫病の為、絶滅に追い込まれてしまいました。1876年、”最後のタスマニアアボリジニ”と呼ばれるトルガニーニの死によってPalawaの歴史に終止符が打たれました。入植者と結ばれた子孫が今でも数千人いるのですが、Palawaの口伝、伝承、言語など失われてしまったものは計り知れません。文字文化を持たず、口伝によってのみ伝えられていた伝統や歴史は一度失われてしまえば、二度と元の形には戻りません。実際、タスマニアの中には多くの史跡や聖地と呼ばれる地があり保護対象となっていますが、なぜ神聖なのか何に使われていたのかなどが全く不明なところが大半なのだそうです。

1788年1月26日、イギリスから最初の植民船がシドニーに到着し、イギリス国旗が高々と掲揚されました。”オーストラリアの歴史”が始まったこの日はオーストラリアのアボリジニにとって”略奪と迫害の歴史”が始まった日でもあるのです。故に1月26日のAustralia Dayは彼らにとって国を奪われた日ともいわれているのです。

悲しい話が多いタスマニアアボリジニの歴史ですが、多くの子孫や研究者が協力しその復興を目指ています。英語名だった地名も例えばKunanyi/Mt WellingtonのようにPalawaと併記されるようになりつつあります。ホバートのTasmanian Museum and Art GalleryやロンセストンのQueen Victoria Museum and Art Galleryでは常設展示があり、彼らの生活の一旦を窺うが出来ます。デボンポートにもTiagarraという小さなアボリジナルミュージアムがありますが、10名からの予約制になっているので立ち寄るのは少し難しいかもしれません。

次回後編では1800年代の入植期からの歴史に迫っていきます。

タスマニア紀行

タスマニアの歴史を巡る:前編

Images courtesy of Tourism Tasmania: